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昔インドにとても乱暴な性格の王さまがいました。   この王さまが狩りに出て、鹿を追っていたが見失ってしまった。 

みると木陰に一人の修行僧が坐禅をしているので鹿の行方を尋ねたが、修行僧としては嘘がつけないので黙っていた。    すると短気な王は怒っていきなり、僧の腕を切りつけた。 深い切り傷からは、不思議にも白く乳のようなものが流れ出た。 

家臣は驚き「王さま、どうかおやめ下さい!この方は戒律を守る尊いお坊様です」。  修行僧は苦痛に耐えながら言った。「この世の行いは必ず現世か未来の世で報いを受けます。 私が切られたのは過去の報い、あるいは今生の試練です。私は王

さまに憎しみを持ちません。  全ての人や生き物に慈しみの心を持つのがブッダの教えですから。 私の血が母の乳のよう

に白くなったのは、この教えのおかげでしょう。 この教えを知らずに暴力をふるう王さまは、なんと不幸なことでしょう」。 

僧の態度に王さまは畏れて、心から懺悔を求めた。修行僧が微笑んでいった。

「一心をもって懺悔(さんげ)すれば、重い罪も軽くなります」。  王さまは二度と乱暴はしないと堅く誓った。

(六度集経)

 インドから中国へ仏教を伝えるときは命の危険もあり、伝道はとても困難なものでした。強い願心と人格の力がなければ、出来ることではありません。