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  4,「現代に必要な地獄の思想」高田好胤和上

(昭和60・サンケイ新聞)  高田好胤(こういん)という和尚は、昭和の頃わかりやすい説法で活躍された薬師寺(法相宗)の管長さまです。  地獄について本気で話すなど当時でも希でした。

高田和上「来世などといえば否定することが、現代人の教養であるが如くにいう人が多いが、 これは現代人のエゴイズムの思い上がりである。  どうして来世を打ち消すことが出来ようか。  私たちのご先祖は、地獄極楽の思想で道義心や思いやりの心を育てられた。 それが今日では自分たちだけがよければよいという、享楽的な世の中に落ち果てた。 未来を思えば恐ろしい所業である。  命あるものは六道輪廻する。  六道とは地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上であり、これらはすべて迷いの世界(迷界)である。  天上というと幸福そのものと思いがちだが、仏教の上では迷界である。  天人の寿命は二万年と長い。 しかし長い寿命も尽きるときがくる。  そのとき天人五衰という老衰症状が露わになる。

すなわち、①天人の体を飾る花が枯れる。 ②天人の衣が汚れてくる。 ③体が臭くなる。 ⓸視力が衰える。 ⑤厭世観に襲われ絶望する。 以上の症状である。 これをみるに、現実の私たちの生活そのものを示唆するところ大ではないか。 現在の繁栄と自由を享受する日々は、まさに天国ぐらしであるが。」  「天人が天上界を去るときの苦しみは、地獄の苦しみよりも何倍も大きいのである。 山高ければ落ちゆく谷底はいよいよ深い。 なんとも穿ちえた表現であり、教戒ではないか。

般若心経に『一切の顛倒から遠く離れよ』と説く。 ないものをあるように思い、物事を逆さまに見て妄想を抱くことを顛倒(てんどう)という。 この文字が私には身に沁みる。 私たちは今、文明化が即ち進歩と思い込んでいるが、これが顛倒である。  文明化による欲望の肥大を進歩と思い込むなど、これが私たちの顛倒である。  この顛倒に気づくことがなければ、堕地獄の報いからの免れは所詮術なき沙汰である。▲

付記:要点はエゴイズムが現代人の顛倒である。 天界から去る時は、耐えがたく地獄の苦しみよりもはるかに大きい。 文明化が進歩と思い込むのは顛倒である‥等々。

 

  顛倒の時代に顛倒の主張あり 😱

「忍耐に意味がない」 「貧乏人は無能で不幸」 「苦しみが人格を磨くという変な思い込み」  「日本社会は同調圧力が強く住みづらい」  「日本は市民革命の経験がないので、日本人は市民意識というものがない。今も自立していない」など。

かくして日本人本来の持ち味が、失われていきます。