5,法を説く
涅槃経
「説く者に智慧なく慈悲なくば、聴く人は不信を生ず。 まだ因縁熟さずば不信の者に急いで法を説くなかれ。 悪人に戒律を讃じるなかれ。 強欲の者に布施をあえて言うなかれ。 なぜなら彼らは法を聞き、反って怒り・憎しみや不信を生じて、未来世において永く苦報を受けん」。▲
【訳】説者が未熟なら、聴くものは不信を抱いてしまう。 未熟者が疑い深いものには法を説いてはいけない。 不徹底のものが性悪の者に対して戒律・布施について語るなかれ。 なぜなら説けば説くほど、彼らは反発し怒って反って悪業となってしまうからだ」。
付記:親切なつもりで余計なことをするのが凡人。 未熟者が軽々に法を説いてはいけない。自戒。 人によって因果応報の話をしてはいけないことがあります。 私はかって親しい人に、「因果の話はやめてくれ」と言われたことがあります。 またある人に、苦労して成果を出すという話をすると「その手の暗い話は苦手」といわれた。
賢者は学ぶ。凡人は教えたがる。
タレス「一番難しいことは自分を知ること。一番易しいことは他者を批判すること。」 聞いた話ですが、「イギリスの教育は余り多くのことを教えることはしない。 ただし大切なことを徹底的に教える」と。
龍樹尊者(2世紀・インド)
もし彼の法利のためになるなら、毒も施すを許す。 もし彼の法利を害するなら甘露も施すことを許さず。 ▲
付記:対機説法のこと。 達道の智者は、人の悟りのためになるなら、荒っぽいこともする。 縁の熟していないものには
あえて説かない。 名医は症状に応じて薬を決めるのと同じ。経験豊富でなければできません。
常不軽菩薩(法華経)
常不軽菩薩は全ての衆生に仏性があることを尊び、あらゆる人々を礼拝し「我は汝らを深く敬う。 汝らは必ず仏に成ることを得る」と言いながら遊行した。 中には怒り害する者もいたが、怯むことなく変わらず人々を礼拝の行を続けた。
付記:心中に怒りのない至誠の人が説く場合は、相手の怒りも仏縁の種子になります。